花崗岩の風化
前回美濃焼と瀬戸焼の歴史について少し調べてみました。そして、また新たな疑問が湧いてきました。なぜこの地域はこんなにも良質な陶土に恵まれているんだろう?と。そこで、今回は美濃・瀬戸地方における陶土の起源について調べてみました。
陶土の主成分は粘土です。そして粘土は、”花崗岩の風化”によってできます。まずはこの”花崗岩の風化”について、もう少し詳しく調べてみたいと思います。
■花崗岩とは?
花崗岩とは、火成岩(マグマが冷えて固まった岩石)の一種で、マグマが地下深くでゆっくり冷えて固まった深成岩のうち、下記2条件を満たすもの。
1.主成分が石英と長石で、他に10%程度の有色鉱物を含み、
全体的に白っぽく見えるもの。
有色鉱物の含有量が多い(約30%)ものは閃緑岩の範疇に入る。
2.成分中にナトリウムとカリウムの含有量が少ない非アルカリ岩質であること。
アルカリ分が多くなると石英が減って角閃石が多くなり、閃長岩と呼ばれる。
(以上出典:Wikipedia)
花崗岩は「御影石」としてよく知られていますが、風化しやすい性質があるようです。
■花崗岩の風化
花崗岩は、”物理的風化”と”化学的風化”によって風化していきます。
1.物理的風化(マサ化)
花崗岩は構成鉱物の粒子がおおきいため、地表付近の寒暖差の大きい環境では、粒子ごとに膨張・収縮を繰り返すことで結合がゆるみ(物理的風化)、はがれた鉱物の小さなかたまりが砂状になって崩れていく。この崩れてできた粗いスナをマサ(真砂)
と呼ぶ。
2.化学的風化
花崗岩は、鉱物粒子がバラバラになっていく物理的な風化と同時に、化学的に変化する風化もする。冷却による収縮に伴ってできた割れ目や、結合が緩んだ鉱物粒界から雨水や地下水などの水がしみこみ、花崗岩を形成する長石や雲母は水と反応して粘土鉱物に変質する。例えば、カリ長石は、二酸化探査を溶かし込んだ水と反応して分解され、粘土鉱物の一種であるカオリンとなる。
(以上出典:中津川鉱物博物館HP)
以上から、美濃・瀬戸地方では
・花崗岩に恵まれたこと
・花崗岩が風化したあとの粘土が豊富に堆積する環境があったこと
により良質な陶土に恵まれたと考えられることがわかりました。
苗木‐上松花崗岩
そこで、まず一つ目の”花崗岩に恵まれた”という点ですが、
やはり美濃・瀬戸地方の近くには、地質からみて,苗木‐上松花崗岩などの花崗岩類が広く分布しているようです。この苗木‐上松花崗岩は,7000万~6000万年前に地下でマグマが冷え固まってでき,東濃・瀬戸地方で陶土層が形成されはじめた700万年前ころには地表に露出し、露出した花崗岩が風化によって粘土となり堆積し、粘土層を形成しました。(以上出典:中津川鉱物博物館HP)
東海湖
次に、”花崗岩が風化したあとの粘土が堆積する環境”についてですが、
これは700万年前頃から80万年前頃にかけて形成された「東海湖」によるものといえます。東海湖は、まず知多半島南部付近で発生し、その後北東の美濃・瀬戸地方に拡大、最後には岐阜県の上石地域で消滅したと考えられています。
(以上出典:岐阜県博物館岐阜県地質図「ジオランドぎふ」HP)
この拡大期・最盛期の東海湖により、先に露出していた苗木ー上松花崗岩等の花崗岩が風化し、風化物が堆積して陶土層が形成されたようです。
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なみ (月曜日, 11 11月 2024 04:09)
驚きました。地元に住んでいながらまったくしりませんでした。大変詳しい内容でどのように調べられたのでしょうか。とても勉強になりました。